密閉に欠かせないパッキンの材質と特性
ステンレス容器の密閉にはパッキンが必須。パッキンとは、蓋やその他接続部の間に挟み隙間をふさぐための部品で、内容物の漏出や異物混入を防ぐ役割があります。「シール」の一種です。
パッキンにはさまざまな材質、形状、厚みのものがあり、内容物や使用される環境によって選定する必要があります。相性の良いパッキンを選定しなければ、パッキンが膨潤、変形し、剥離してしまうこともあります。とりわけ密閉容器に関しては、その密閉度に大きく影響を与えてしまう可能性があるのです。
今回は、ステンレス容器に使われているパッキンの材質とその特徴についてご紹介します。
代表的な6種類のパッキン材質
この記事では、以下6種類のパッキンについてそれぞれの特長と欠点をご説明します。
この記事でご紹介する6つの材質
- シリコーンゴム(Q)
- フッ素ゴム(FKM)
- クロロプレンゴム(CR)
- ニトリルゴム(NBR)
- エチレンプロピレンゴム(EPDM)
- 四フッ化エチレン樹脂(PTFE)
シリコーンゴム(Q) -Silicone rubber- (弊社名:シリコン)
耐候性、耐薬品性、非粘着性、耐オゾン性などの特性を持ち、難燃性、撥水性、電気絶縁性などに優れています。工業用途だけでなく家庭用品にもよく使われています。
弊社ステンレス密閉容器用パッキンの標準材質です。>シリコンパッキン
※使用温度範囲:-70℃~+200℃
○特長
■耐候性
酸素、オゾン、紫外線に対する安定性に優れ、長時間紫外線や風雨にさらされても特性はほとんど変化しません。
■耐薬品性
アルコールや希酸、希アルカリなどにはほとんど侵されません。
■撥水性
他のゴムより濡れにくく、防水シール材としても使われています。
■難燃性
炎を近づけても簡単には燃焼せず、着火した場合も煙や有毒ガスの発生がほとんどありません。
■非粘着性・非腐食性
離型性に優れており、離型剤としても使われています。また、化学的に不活性で他の物質を腐食させません。
■透明性・着色性
シリコーン本来の透明性に優れ、着色できます。>カラーパッキン
着色した場合もシーリング材としての基本的な性能は変わりません。
×欠点
- 強酸に弱い
- 非粘着性により一般の有機系接着剤ではほとんど接着できない
- 引っ張り強度・引き裂き強度・耐摩耗性などの外的な力学的要素に弱い
- 気体透過性が大きいため、気体を通しやすい(ただし水と水蒸気は分子の密度が異なるため、防水性が悪いわけではない)
- 熱や紫外線で黄変することがある
パッキンがブヨブヨになる!?
パッキンと液体の相性によっては、パッキンが液体を吸収して膨張し、ブヨブヨになることがあります。このことを「膨潤」と呼びます。
これは液体がパッキンのゴムの分子間に入り込んでしまうことで生じます。その他にも、使用環境や液体との相性によってはパッキンに亀裂など劣化が生じる場合もありますので、最適なパッキンを選定する必要があります。
フッ素ゴム(FKM) -Fluorocarbon rubber-
現在市販されているフッ素ゴムの場合、フッ化ビニリデン系フッ素ゴム(FKM)のものを指すことが一般的です。
フッ素ゴムはゴム材料中で最高の耐熱性を持ち、優れた耐油性、耐燃料性、耐薬品性を持つことから、自動車部品や化学プラントなど幅広い分野で使用されている合成ゴムです。
○特長
■耐熱性
使用温度範囲:-10℃~+230℃
シリコーンゴムに比べ長時間シール性能が維持できるため、高温部分のシールに使われます。
■耐油性
一部のリン酸エステル系の作動油を除き、鉱油のほとんどに高温まで耐えます。
×欠点
- 耐寒性に劣る
- 他のゴムに比べて非常に価格が高い
- 有機酸、ケトン、エステル、アミン系の薬品には耐性がない
クロロプレンゴム(CR) -Polychloroprene rubber-
古くから使用されている合成ゴムです。機械的強度、耐候性に優れ、それ以外の特性に対しても平均的でバランスが良いため幅広く使われています。難燃性、接着力(ゴムのりにした時)が強い、ガス透過率が低いなどの特長もあります。ウェットスーツなどでも使用されている材質です。
※使用温度範囲:-35℃~+110℃
×欠点
- 耐熱性に劣る
- 低温時に結晶化しやすく、低温時の使用には向いていない
ニトリルゴム(NBR) -Nitrile butadiene rubber-
耐油性、耐摩耗・耐老化に優れた合成ゴムです。特に耐油性に優れています。
圧縮永久ひずみ、引張り強さ、耐磨耗性にも優れ、シール材や手袋の材料、自動車部品など様々な分野で使用されています。
※使用温度範囲:-10℃~+120℃
×欠点
- 耐熱性に劣る
- ケトンやエステルなどの極性溶剤には使用できない
- 耐候性(耐オゾン性など)に劣る
なぜタイヤは黒色なのか
タイヤやウェットスーツ、パッキンなど、黒色のゴム製品を良く見かけます。特にタイヤは黒のイメージが強いですね。
これはゴムの強度や耐摩耗性を向上させるためにカーボンブラックという、黒色の炭素の微粒子を配合しているというのが主な理由です。ただし現在では、カーボンブラックの代わりにホワイトカーボンと呼ばれる白色のシリカを補強剤として使っているものも多くなり、黒色以外のゴム製品も増えています。
エチレンプロピレンゴム(EPDM) -Ethylene propylen diene rubber-
耐薬品性、耐寒性、耐オゾン性、耐老化性にすぐれた合成ゴムです。また、比重が市販ゴムの中で最も小さいなどの特長も持っています。オゾンに強く老化しにくいことから、自動車部品や競技場のトラックなどにも使用されています。
※使用温度範囲:-40℃~+140℃
×欠点
四フッ化エチレン樹脂(PTFE) -Polytetrafluoroethylene plastics-
フッ素樹脂とも呼ばれ、耐薬品性、耐オゾン性、耐候性に優れています。これまでご紹介した材質とは異なりゴムではなく、樹脂(プラスチック)です。最も摩擦が少ないほか絶縁性も高く、電気絶縁材としても優れた材料です。
非粘着性・低摩擦性(すべりやすい)により、摺動材としても使用されます。フライパンのコーティングなどでも有名です。このように優れた特性から、さまざまな分野で使用されています。>PTFEパッキン
■耐薬品性
どんな酸やアルカリ、有機薬品に対しても安定しており、吸湿・吸水・膨潤もなくほとんど侵されることがありません。
■耐熱性
使用温度範囲:-100℃~+260℃
広い温度範囲にわたって長時間の使用に耐えることができます。
×欠点
- 価格が高い
- 一品毎に削り出しのため量産ができない
- 樹脂の為、パッキンとしてのシールが弱く密閉性に劣る
- 磨耗しやすい
- 非粘着性により、接着剤による接着ができない
パッキンはすべてPTFEでよいのでは?
PTFEは他のゴムよりも優れた要素が多いですが、樹脂であるために密閉性に劣るという弱点があります。また、他パッキン材質に比べ値段が高く、採用しにくい点も挙げられます。
パーフロ(FFKM) -Perfluoroelastomer-
PTFEは優れた耐薬品性を持っていますが、密閉性には劣るのが難点です。そこで、耐薬品性と密閉性を求めたい場合はパーフロを採用します。パーフロはパーフルオロエラストマーとも呼ばれ、フッ素ゴムの一種です。ゴムパッキンの中で最も耐薬品性・耐熱性に優れています。性能も良く需要も限定的となることから、非常に高価なゴムです。
ご注意
この記事は一般的な参考データであり、使用条件や環境により変わることがあります。
弊社では使用環境や内容物、コスト面などからお客様に応じて最適なパッキン材質を選定いたしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
パッキンの特性一覧表もご用意しています。>パッキンの特性一覧表
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