技術コラム

なぜステンレス溶接後にビードカットを行うのか?
2025/04/03 00:00
 

食品・医薬品・化粧品業界では、生産設備の衛生管理が製品品質に直結します。特に、ステンレス製の容器や設備の溶接部(ビード)は、雑菌の繁殖や汚れの蓄積を招きやすく、サニタリー性(衛生性)や洗浄性の向上が重要です。

本記事ではビードカットの重要性とメリット、デメリット、その他加工のコツなどをご紹介します。

ビードカットとは?なぜ必要か                   

ビードカットとは、ステンレス製品の溶接後に発生する溶接ビード(溶接時に生じる金属の盛り上がり)を滑らかに削り落とす加工のことです。
溶接ビードが残ったままだと、表面に凹凸が生じ、食品や薬品が付着しやすくなり、洗浄も難しくなります。また、美観を損なう要因にもなります。

特に容器内面など直接液体などが触れる内面のビードカットは外面より重要です。液体や粉体やスラリーが障害なくスムーズに排出でき、対象物が溜まる箇所をなくすことが可能となり、衛生管理面で大きなメリットがあります。

ビードカット加工の例

▲ビードカット加工前後イメージ

ビードカット加工の例

▲ビードカット加工断面図イメージ

検証テスト

ビードカット前後で具体的にどの程度サニタリー性、洗浄性が向上するのか検証してみました。
条件は浸透探傷試験(PT)で使用する浸透液を塗布し、ウエスで2回ほど拭き取る手順で行いました。

ビードカット前後の検証

【検証結果】
ビードカットを実施した場合、未実施と比較して溶接ビード部に付着した浸透液の残留が著しく減少しました。細かい凹凸が無くなり、表面が平滑化されることで、サニタリー性および洗浄性が大きく向上することを確認しました。

ビードカットのメリット                      

食品・医薬品・化粧品業界で扱うステンレス製品ではビードカット加工が多く採用されています。そのメリットについてもう少し詳しく見ていきましょう。

  • ① サニタリー性の向上
  • 溶接部の凹凸が減少し、雑菌が繁殖しやすい隙間や角が少なくなるため、衛生面が大幅に向上します。

    サニタリー性の向上
  • ② 洗浄性の改善
  • 平滑な表面に仕上げることで、洗浄が容易になります。洗浄時間や使用する洗剤の量も削減できます。

    洗浄性の改善
  • ③ 残渣が残りづらい
  • 凹凸が少ない仕上がりにより、食品や薬品、化粧品の残渣が残りにくくなり、異物混入リスクを低減できます。

    残渣が残りづらい
  • ④ 流動性の改善
  • 内面の滑らかな仕上げにより、液体や粉体がスムーズに流れ、工程効率が向上します。

    流動性の改善
  • ⑤ 外観品質の向上
  • 美しい表面仕上げは企業イメージや信頼感にも寄与します。特に目視検査重視の現場では評価されます。

    外観品質の向上

    ビードカットのデメリットとその対策                

    次はビードカットのデメリットに触れていきましょう。ビードカットをするかしないかは、製品によって見極めが非常に大事になってきます。
    MONOVATEではそのデメリットを考慮したうえ設計、提案しています。

  • ① 工程の増加によるコストアップ
  • 初期設計段階で、ビードカットが本当に必要な箇所のみを絞り込むことで、コストアップを抑えます。

  • ② 施工に要する時間の増加
  • コストアップに伴い納期がどうしても長くなってしまうので、あらかじめ納期調整を担当者とすり合わせます。

  • ③ 削りすぎによりステンレス材の強度が低下
  • 高い圧力や応力集中がかかる箇所、振動疲労による破壊を懸念する場合はむやみにビードカットをしないことを厳守します。

    食品・医薬品・化粧品業界向けカスタマイズ製品のお問い合わせ    

    MONOVATE株式会社では、食品・医薬品・化粧品業界向けのカスタマイズ製品に多数の実績があります。

    ビードカットをはじめ、電解研磨やバフ研磨など、用途に合わせた最適な表面加工をご提案可能です。 「この仕様はできる?」「こんな加工もお願いできる?」など、お気軽にお問い合わせください。専門スタッフが丁寧にご相談を承ります。


    事例を見る

    温度管理と残量確認機能が付いた撹拌温調ポンプユニット


    事例を見る

    安全センサ付き撹拌温調ユニット(蓋拡張)


    事例を見る

    粉体洗浄ユニット

    カスタマイズ製品について相談する

    番外編:ビードカットの使用工具/コツ               

    ビードカットの工程において使用工具の選定も大事になってくるポイントです。 ディスクグラインダーハンドグラインダーを中心に、狭く細かい箇所ではリューター超硬ロータリーバーも駆使する場面もあります。

    ディスクグラインダー

    ディスクグラインダー

    ハンドグラインダー

    ハンドグラインダー

    作業者に向けたちょっとしたコツ

    • 作業は一方向に一定の動きを繰り返し、ムラを防止する。
    • 砥石や研磨ディスクの番手は粗いものから徐々に細かくしていく。
    • ビード形状を見極め、過剰な削り込みを防止するため、適切な角度で工具を当てる。
    • 目視や触診で定期的に仕上がり具合を確認し、加工過程で適宜調整する

    化粧品原料ろ過容器

    ビードカット後の後工程として、バフ研磨電解研磨があります。さらに細かい表面仕上げを行い、鏡面仕上げや高い平滑度を実現します。バフ研磨により表面の微細な傷や凹凸を除去し、洗浄性サニタリー性をより高めることが可能です。

    溶接の品質がビードカットの仕上がりを左右する

    ビードカットの仕上がり品質は、元の溶接の仕上がりクオリティーに大きく左右されます。溶接時のビード形状が不均一である場合や、過度に盛り上がっている場合、後工程での加工難易度が高まり、仕上がりの精度や表面品質に影響を及ぼします。そのため、溶接段階での精密な作業と高度な品質管理が、ビードカットの成功を左右する重要な要素となります。

    MONOVATE株式会社では多数の食品・医薬品・化粧品業界向けカスタマイズ製品の製作実績があります。
    ぜひお問い合わせください。

    カスタマイズ製品について相談する